ちょっと痛みが出たり、被せ物が取れた時に歯科にかかると何故かどんどん悪い所が出てきて気づいたら半年通っていたなんて経験ある方がいらっしゃるかもしれません。
殆どの歯科医院では、初診でかかるとレントゲン、視診、歯周病検査、口腔内写真など一通りお口の中全体の情報を収集してから治療に入ります。
これを元に治療計画を立て、まずは主訴の部分の改善をすすめ、その後必要な部位に関しても治療を勧めるためです。
ただこれは保険の縛りや一口腔単位でしっかりと治したい歯医者側の事情もあるのは事実で、患者さんにとってみては何度も通うのは面倒ですし忙しくて通えない方も多いと思います。歯科医院によっては患者さんの事情に合わせて対応してくれところもあります。
レントゲンから何が分かるのか?
レントゲンからは目に見えない情報を得ることが出来ます。
良く歯医者さんに行くとお口の中全体のレントゲンを撮ると思います、パノラマと呼ばれ全体の状態を把握することが出来ます。
・虫歯の有無(ある程度大きく無いとわかりずらい)
・根の先に病変があるかどうか
・歯を支える歯槽骨の状態
・神経の処置をしてあるかどうか
・補綴物の適合状態
・歯石の有無
・顎関節の状態
・上顎洞の状態
・親知らずの状態
・子供の場合だと乳歯と永久歯の状態
などを確認する事が出来ます。無症状である場合が多いので必要がある場合は治療をすすめ治療計画に入れていきます。
またパノラマではわかりづらい情報に関してはデンタルと呼ばれる小さいレントゲンを撮ることがあります。こちらでは一つ一つの歯に関する細かい情報が得られるので診断に良く使われます。
レントゲンの被曝量について
レントゲンというと放射線の被曝を想像してしまい過度に怖がる方も多いですが、最近ではデジタル化も進み被曝量はかなり低く抑えられています。
歯科用X線(1回) 0.03msV
歯科用CT(1回) 0.1m sV
胸部X線(1回) 0.1~0.3msV
1年間自然に浴びる平均 2.4msV
胃のX線(1回) 4msV
X線CT(1回) 7~12msV
健康に影響が出る(1回) 100msV
白血球の減少 250msV
50%の人が死亡 3000~5000msV
歯科ではピンポイントで歯の撮影をする上に、X線を撮影するときは鉛の入った防護服を着てもらうので、ほとんど影響がないと考えて良いと思います。
妊婦さんでも治療に必要であればレントゲンは撮影することもあります。しかもデジタルレントゲンの場合は被曝量がさらにその1/2から1/8程度になります。
歯周病検査で何がわかるか?
歯周病の検査では歯周ポケットの深さ、出血の有無、腫れの有無、歯の揺れなどを診ます。
・歯周ポケット
1点法〜6点法まであり精密に測る場合は1歯につき4箇所もしくは6箇所を測る4点法、6点法を用います。歯の本数や基本か精密によって診療点数が違います。
・BOP(breeding on probing)
歯周ポケットを測った時の出血の有無 炎症があると出血する傾向があります
・歯の動揺度
歯の揺れの程度を測定します。歯周病で歯を支える骨が溶けると歯が揺れてきます
1〜3で判定します。
・PCR(プラークコントロールレコード)
PCR検査ではありません、プラークコントロールレコードと言います。
歯面にたいしてどれだけ汚れがついているか染め出しをして判定します。
10%以下だと優秀ですが、20%以下でも一般的には問題ありません。
これらをレントゲンを参考にして測っていきます。
成人の大半の方はどこかしら4mm以上の歯周ポケットが存在する事が多いので歯周病の治療を勧める場合があります。こちらも無症状の方が多いので驚かれる方も居ます。
歯周病の治療の決まり
歯周病の治療は保険で細かく決められているため回数がかかってしまいます。(地域によっても異なる謎ルールもあります)
この順番で行わないといけない為、いきなり再生治療は出来ません。
また歯周組織の改善を待ってからでないと、被せたりする補綴治療に入れない縛りもあります。
① 歯周病検査
② スケーリング(歯茎の上の部分にある縁上歯石の除去)
③ 2回目の歯周病検査
④ 6ブロックに分けたSRP(歯茎の溝の中にある縁下歯石の除去)
⑤ 精密検査
⑥ 歯周外科治療・再生治療
⑦ 歯周病検査
⑧ SPT(歯周病安定期治療) 月1間隔 〜3ヶ月
視診・口腔内写真
視診では最近では歯科用の顕微鏡や口腔内カメラを用いる所も増えています。
歯が欠けてたり虫歯になっている所や段差になっている所を実際に一緒に見てもらうと納得して治療を受ける事が出来ます。ただ黒くなっているだけの所は虫歯ではありませんのでむやみに削られないように注意しましょう、歯の治療の沼にはまってしまいます。
また治療前後の写真を比べる事でも利用される事が多いです。何か良くわからないけど虫歯があると言われ、言われるがまま治療をされることが無いように疑問がある場合はその都度聞いてみると良いです、
これらの検査で治療計画を立てて患者さんの口腔内の状態の改善と衛生面の向上を測ると治療に時間がかかってしまいます。
また神経の治療や被せ物、入れ歯を作製する工程は一回では終了する事が出来ないのでどうしてもある程度の期間はかかるのは仕方がありません。
保険診療の縛り・・・
と、ここまでは表向きの理由(怒られそうですが・・)で歯科治療が長引く理由を見てきました。あとは歯科医院側の理由として保険診療の問題があります。
・保険診療の決まり事
保険診療では決まり事が多くあり、上記でものべましたがまずは歯周病の治療、一回で行える治療はここまで、1週間以上空けて検査、1ヶ月以上空けて検査、そのあとに補綴(被せ物をする)という厳しいルールがあります。これに則って治療をすすめると本当に半年〜1年コースになってしまいます。
・行政指導対策
保険診療で1ヶ月の診療点数が高点数になってしまうと、個別指導と呼ばれる行政からの指導を受けることになります。準備するものが多く、徹夜を続けて指導に臨んでも、ちょっとした不備があるとその分の診療報酬の返還を求められたり、不正をしていないにも関わらず再指導になる場合もあります。
これはかなりの精神的、肉体的ストレスになるため回避するために、一回の診療点数を抑える医院もあります。(治療する本数を減らして調整する)
・保険点数が低い
保険点数の低い根管治療(歯の根っこの治療)は時間を30分しっかり取っても点数が低い為何回かのアポイントに分けて治療を進める医院も多いです。根の治療だけで何度も通院した記憶がある方も多いのではないでしょうか。
・アポイントを埋めたい
最近ではメインテナンス(歯周病予防の処置)が保険でも認められたためメインテナンスのアポイント枠は埋まりやすい傾向になっていますが、アポイントが埋まらないと医院の経営状態も悪化、スタッフも余ってしまい、院長先生も不安になりやすい傾向があります。
あとは検査したりレントゲン取れば大抵何箇所か悪い所はみつかります、歯周病は成人の80%がなっていると言われていますし、樹脂は経年劣化もありますし、歯茎が痩せると被せ物の段差ができたりします。大事なのは日々のケアの部分でその部分を改善せずに再治療をくりかえしても根本的な解決にはなりません。また全ての部分を処置する必要の無いケースも多く経営的に過剰診療になっている歯科医院も多々見受けられますのでやはり信頼出来るかかりつけ医をみつける事が重要になります。再治療を繰り返す医院は要注意です。
実は一回でやろうと思えば出来ます!
短期集中治療と言って時間を取って何箇所もやったり、機械で自動的に詰め物や被せ物を作製出来る機械のある所ではワンデイトリートメントをうたってやっている歯科医院があります。ただし保険のきかない自費診療の場合が多いです、高額ですが時間のない方は一気に何箇所も治すことが可能ですので探してみると良いでしょう。
最近では予防歯科や歯周病予防の概念が定着したおかげで予約が1ヶ月待ちなんで医院も増えて来ていますが、歯科業界もイノベーションが起きて患者さんの通院への負担が減る改革を起こしてくるでしょう。期待しています!
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